【美術展訪問記】中川衛 美しき金工とデザイン

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東京・新橋駅近くのパナソニック汐留美術館で開催されている"中川衛 美しき金工とデザイン"に伺いました。

中川衛さんは石川県金沢を拠点に活躍・象嵌普及に努められる金工芸作家です。
1947年に石川で生まれ、金沢美術工芸大学卒業後1971年松下電工に入社されました。そのご縁で、パナソニック汐留美術館での開催になったようです。

展覧会は中川さんの美大時代の製作と松下電工でのプロダクトデザインのお仕事を経て、金工作品に入ります。

石川工業試験所に転職されてから、勉強に訪れた地元の美術展で、鎧の力強さとデザインの洒脱さに魅了され、高橋介州氏を師に加賀象嵌の製作を一から始められたそう。

加賀象嵌は武具を源流とし、深さ1mm以下の溝に異素材を嵌め込み磨き上げる技法で、モダンな意匠が特徴です。中川さんは伝統技法を探求の末、異なる金属の層を組み合わせる"重ね象嵌"を編み出したそうです。製作の過程で、工業デザインを思わせる、サイズ等を細かに書き込んだ図面が展示されていました。

わたし自身、自営業でギャラリーをしながら企業で働く者として興味深く感じたのは、企業デザイナーとしての仕事と一人での製作は相反するものではなく、それぞれのやり方を取り入れることで質を高めていけるということです。
企業のご経験を活かし、かつ古代アナトリア等多くの象嵌事例を見聞きしながら、独自の世界を創り出される過程は学びが多いものでした。

中川さんは北欧とも繋がりがあられ、1999年以降、フィンランド・スウェーデン・デンマークなどの北欧諸国を訪問され、2004-2005年にはコペンハーゲン王立工芸博物館等で”現代の日本の金工"展に携わられたそうです。

スウェーデンご訪問時に目にされた、木と水面と飛行機の光線をモチーフとした作品が出展されており、そうそう、これはスウェーデンの風景だと懐かしくなりました。

内容は大充実ですが、展示エリアはコンパクトなので、短い時間でも訪問しやすそうです。新橋方面にお越しの際にはぜひ。

写真の1・2枚目はご本人作品と、学びを受けた生徒さんによる作品の展示です。作品の繊細な美しさを浮かび上がらせるライティングも素敵でした。