【美術展訪問記】”土方久功と柚木沙弥郎 ―熱き体験と創作の愉しみ”他
過ごしやすい気候になってきましたね。
東京は金木犀のいい香りがそこここで漂っています。
猛暑だった夏に比べると、徒歩で美術館に行きやすくなりうれしいです。散歩を兼ね、世田谷美術館に行きました。
世田谷美術館は砧公園の中にあり、緑に囲まれたロケーションが最高です。
コンクリート建築は内井昭蔵の代表作で、外光がふんだんに入り、天然石の床などクラシックな内装が美しいです。
離れに広々としたカフェがあるのが、デンマークやスウェーデンのミュージアムを思い出しました。
(Yチェアが採用されていました)
現在は
"土方久功と柚木沙弥郎―熱き体験と創作の愉しみ"と
"雑誌にみるカットの世界 『世界』(岩波書店)と『暮しの手帖』(暮しの手帖社)"の2展が開催されています。
どちらも美術館所蔵作品を中心にした展示です。
土方久功さん(1900-1977)は29歳でミクロネシア地域のパラオ諸国に渡り、15年に及ぶ現地の暮らしを民俗学として残す一方、木彫や絵画を制作しました。
パラオに赴任し、後年に"山月記"を書いた中島敦とも親交があったそう。
柚木沙弥郎(1922-)さんの展示は、染色と自宅のコレクション、また造形から衣装までをご自身で手掛けた人形が見応えがありました。
"雑誌にみるカットの世界展"では、岩波書店”世界”の挿絵や、”暮しの手帖”に花森安治(NHK朝ドラ"とと姉ちゃん"で唐沢寿明さんが演じられていました)さんが描いた原画を鑑賞することができます。
特に花森安治さんが暮しの手帖の企画・編集をしながら、亡くなるまで表紙や無数の頁カットを描いた仕事量は信じられない思いでした。
なお、彼と柚木沙弥郎さんは、東京大学文学部美学美術史学科の出身という共通項があります(花森さんが11歳上)。
花森さんは広告・編集・ジャーナリズム、また柚木さんは染色からデザインと、複数の分野で活躍し社会を豊かにする様子は、同時代の北欧諸国の芸術家と近しいものを感じました。
2展とも写真撮影はできませんが、こうして展示に集中するのもいいなぁと思いました。
世田谷美術館には、砧からやや離れた場所に3つの分館があります。
宮本三郎記念美術館 の美しい展示ポスターを見たので、近く訪問したいです。
また文学に興味があられれば、区内の世田谷文学館を回るのもおすすめです。
"文学"を広く捉え、小説・絵本・マンガ・イラストレーションなど、幅広いテーマで展示をされています。
近隣には素敵なレストランやスイーツのお店も多く、充実した時間を過ごすことができそうです。