【美術展訪問記】超絶技巧、未来へ!明治工芸とそのDNA
東京日本橋の 三井記念美術館 で開催されている"超絶技巧、未来へ!明治工芸とそのDNA"展に伺いました。
本展は京都の清水三年坂美術館所蔵の明治期の工芸コレクションをきっかけに、現代作家作品を加え、過去→現在→未来、とテーマをブラッシュアップしながら今回第3回目の開催となるそうです。
展示作品数は現代工芸64点、明治工芸57点です。
展示会名のとおり、日本で脈々と継承されてきた工芸技術が現代の作家さんに引き継がれ、更なる高みに登っている流れを感じる展示でした。
肉眼で捉えきれないほど微細な細工が施された作品が多く、作品が生まれるまでの途方もない鍛錬を想像してため息が出てしまいます。作品の素晴らしさが写真で伝わるといいのですが…。
興味深く思うのが、日本においてどういう過程で、世界に類を見ない水準までマイクロ工芸の技術が高まったのかということ。
清水三年坂美術館のホームページでは、"これらの技法は刀装具、印籠、香道具等の装飾に多用され、幕末から明治にかけて、その技術レベルや表現力は頂点に達しました。それは将軍家や大名、急速に力をつけてきた商人、明治に入ってからは皇室などの支援により、優秀なアーティスト達が育成されてきたからです。(一部引用)"とご説明されています。
また愚見ではありますが、かなり大きかったのではと思うのが、為政者や商人の嗜みであった茶道の存在。
茶道ではお道具を間近で手に取り、器の裏までつぶさに拝見する作法があります。
想像を絶する繊細さを有した工芸作品はさぞ見た人を驚かせ、そうしたお道具への熱狂的な需要が、工芸技術の更なる高まりに寄与したのではと想像します。
展示会後、エントランスで放送されていた製作過程の映像も素晴らしく、大竹亮峯さんの月下美人の作品が水を注ぐと花開く様子や、ミズメザクラで作られた蟹の置物を自在に動かす様子を見て、作品をより理解できたように思いました。
重要文化財でもある三井記念美術館は、20世紀アメリカで流行した新古典様式のクラシカルな建物です。
内装の意匠も美しく、建築に興味がある方にもおすすめかと思います。
美術館の向かいには、デンマークのシルバーメーカーのGeorg Jensenのお店があり、そちらに寄るのも毎回楽しみです。