【美術展訪問記】鈴木繁男 – 手と眼の創作

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2024年 明けましておめでとうございます。

日本ではお正月から様々なニュースが飛び込んできました。関連されたみなさまの生活が少しでも早く落ち着かれることを、心からお祈り申し上げます。

デンマークでは、2023年末に国民に長らく愛されたマルグレーダ女王が退位を発表され、2024年に新国王のフレデリック10世が即位されました。

本年も北欧と絵画の魅力をお届けしていきたいと思います。本年もGALLERI AKARIを何とぞよろしくお願い申し上げます。

1月らしく晴れ渡った週末、東京の駒場にある日本民藝館で開催されている"鈴木繁男 - 手と眼の芸術"展に行きました。

鈴木繁男は生家の漆芸を早くから鍛錬されていたことから柳宗悦に才を見出され、唯一の内弟子となった人物です。
21歳で弟子入りし、25歳上の師から工芸や直感(指導方法が想像できません・・・)について薫陶を受けたそうです。
本展は鈴木繁男の没後20年を記念し、彼が創り出したポスターなどの意匠や陶磁器、またその審美眼にかなった古今の工芸品を展示するものでした。

今回知れて特によかったなぁと思うのが、鈴木繁男の分野をまたいだ探求の姿勢です。

鈴木繁男の名が関係者に知られたのは、雑誌「工藝」の表紙として和紙に漆で描いた作品を発表したことだそうです。
創造分野は装丁にとどまらず、漆塗の団扇など日用品・掛け軸・絵画・陶磁器にまで広がっていきます。

陶磁器も、製作のきっかけとなった壺屋焼を思わせる赤絵から、現代アートのような呉須絵まで広く手がけられており、「本当に全部ご自身で製作されたのですか?」とスタッフの方に伺ってしまったほどです。
(製作はご自身ながら、故郷の磐田はじめ、各地の窯の職人の技術指南を仰いだということでした。)

鈴木繁男は1914年に静岡市で生まれており、こちらのブログでご紹介したデンマーク画家Herdis Gelardiと同じ生年です。
当時の北欧でもAsger Jornなど幅広く活躍したが芸術家が多いですが、1つの分野をつき詰めるとそれが礎となって別の分野に枝葉が広がっていくのだなぁと思わされました。

(ちなみに民藝運動が隆興した時期に、当時の北欧の芸術家たちとも相互交流がありました。民藝と同時代の北欧の工芸品は、職人の手仕事を尊ぶ暮らしのための創作物という共通点もあり、とても相性がよいです。)

また、鈴木繁男は創作だけにとどまらず、洗練された工芸作品のコレクションを遺されたそうです。
中には平安時代の土物の壺も展示されており、楽しみにしている今期の大河ドラマ「光る君へ」で人々が水を貯める壺もこういう感じだったのかなぁなどと空想が膨らみました。

本展示は、3月20日まで開催です。
日本民藝館自体もとても美しい建物で、自然素材を用いて自然光を取り入れる設計は、デンマーク家屋の造りと近しいものを感じます。お散歩を兼ねて、お出かけされてみてはいかがでしょうか。