【美術展訪問記】三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions
千葉市美術館で開催されている三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions 展に伺いました。
三沢厚彦さんは1961年に京都府で生まれ、子どもの頃から寺院で神仏の彫刻に親しんだそうです。
三沢厚彦さんといえばポップな色合いの巨大な動物像が代表作で、わたしは鑑賞するのは初めてです。
作品に対面して特にユニークだと感じたのは、動物たちの"眼"。肉食動物も草食動物も爬虫類も、瞳孔が全開の"眼"で真正面を見ています。
よく見ると眼は粘膜まで含め、ピンク・青・黄・緑など4-5色で細かに表現されています。
見る方を射抜くような"眼"は、仁王像などにも通じる表現のように思いました。
また爪・蹄・嘴・鼻など、動物が生き延びる上で重要な器官は獰猛なまでにデフォルメされ、さらに体格は筋骨隆々です。像の色合いはポップなのに、"かわいい"よりも"生物の強さ"を感じます。
驚いたことに、三沢さんは実際の動物をなるべく"見ない"で製作するそう。
"動物"を写しとるのではなく、三沢さんの中で神話獣のように再構築された唯一無二の"ANIMALS"を見られることが、この展示の醍醐味だと思いました。
写真撮影可なのは一部作品のみですが、素晴らしい作品はまだまだたくさんありました。
動物作品は、楠(仏像にもよく使われる素材)を彫り、油絵具で彩色されています。大きな作品は寄せ木造りでパーツを組み合わせています。
本によると、木を積み重ねて動物とほぼ同寸大に整形しており、象などの大型動物は相当な重量がありそうです。
一方、像の体格は歪みがなく、これほど大きな動物像を、しかも1人の制作で、対称にするのはどれだけ難しいんだろうかと驚嘆しました。
最後の方の新規制作されたキメラ像の展示は、ライトを落とした空間が真新しい楠の香りで満たされ、像と対話しているような気分になりました。
展示が開催された千葉市美術館は、銀行店舗だった建物を転用した美しい空間です。
所蔵1万点を超えるという常設展も含め、3時間以上のんびり過ごすことができました。
広報誌や展示と絡めたアート体験コーナー(最後の写真。木片で自分の作品を製作・ディスプレイできます)も大充実で、ボランティアの方も屋外展示の場所を教えてくださるなど、とても暖かい雰囲気でした。GALLERI AKARIも見習って頑張らねばと刺激を受けた美術館でした。